BSCと組織の学習能力

BSCと組織の学習能力

小倉昇(著)
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BSCと組織の学習能力

小倉昇(著)

企業会計(55(5) 2003年)


はじめに
1.従業員満足と顧客満足
2.組織の学習能力を示す尺度
3.組織の学習能力測定の実験

BSCにおいて、人材と変革の視点が、どのように経営戦略の実現に貢献しうるのか、ということは大きな問題であった。

まだ、組織の学習能力の測定の段階に過ぎないが、これを実際のデータで取り出そうとした挑戦的な研究である。

BSCという意味で読むと、戦略マップの視点や戦略目標間の因果関係に対して、そこまでの因果関係を求めるべきか、という問題や、KPI間にも因果関係を求めるような記述があるが、それは必要なアプローチなのか、ということもあるが、著者の研究が進めば、BSCの保有し、まだ結論の出ていない問題についても、解答につながる成果が出てくるかも知れない。

P673
最近の研究によって、サービス産業では、従業員の態度や満足度という要素が、顧客との良好な関係を構築し、高い収益性を得るための重要な変数であることが明らかになってきた。BSCの文脈に引き直せば、組織の学習の視点が、むしろ、顧客の視点と直接的な因果関係を持ち、業務プロセスの視点(またはその中の一部のKPI)は組織の学習を支える要素と位置づけることが望ましい場合があると考える。

P673
大きな問題は、顧客の視点や業務プロセスの視点の戦略目的に適合した「組織風土」のあり方を数値目標として表現する手段が無いということである。先述したように、組織風土を測定する代替変数として、しばしば従業員満足という指標が使われる。これは、従業員が経営戦略に沿った行動をし、それを適正に評価されていれば、結果として満足度が高くなるという結果をフォローしているのであって、従業員満足度を向上させることによって、従業員が経営戦略に沿った仕事の仕方を選ぶわけではない。従業員満足度は、従業員の戦略的な行動の成果変数であって、戦略的行動を導く操作変数では無い。

P674
しかも、満足度という指標は、従業員のコミットメントの方向性を判別できないという限界を持っている。一般にコミットメントは、組織に対するコミットメント、職種に対するコミットメント、職務目的に対するコミットメントに区分される。

P676
この研究は、まだアイデアを可視化しただけのものであって、実用化までに確かめねばならないことは多い。たとえば、組織学習の促進要因が顧客の視点や業務プロセスの視点のKPIとどのような因果関係を持つのかを検証する必要がある。この関係が明らかにならなければ、顧客戦略に適合した従業員の学習能力の開発などという課題にも解を出せる可能性が出てくる。

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