戦略的管理会計と非財務的尺度

戦略的管理会計と非財務的尺度

園田智昭(著)
こちらについての
ご購入、ご質問については、
お気軽にお問い合わせください。

*担当者よりご連絡いたします。

戦略的管理会計と非財務的尺度

園田智昭(著)

三田商学研究(41(6) 1999年2月)


Ⅰ.本稿の論点
Ⅱ.非財務的尺度の定義
Ⅲ.非財務的尺度に関する諸説
Ⅳ.Fisherの諸説の検討
Ⅵ.非財務的尺度の分類
Ⅶ.マネジメント・プロセスでの非財務的尺度の利用
Ⅷ.財務的尺度と非財務的尺度の関係
Ⅸ.結論

BSCを議論するにあたり、非財務的な尺度、指標とはどういうものか、ということを改めて検討しておくことは非常に重要だと思う。

当たり前の議論かもしれないが、非財務的尺度への言及は、AAA等から1950年代から指摘されていることを紹介されていて、頷ける部分も非常に多い。もちろん、当時の取り上げ方の重点は、現場の原価計算的な側面に近い取り上げられ方であったようだ。

また、戦略との関わりの意味での非財務的尺度は、時代時代で取り上げられており、その諸説について、少数とはいえピックアップして紹介されているのは興味深い。

また、BSCとの関係でいえば、戦略から重要成功要因を介し、非財務的尺度を抽出するという関係についてFisherを通じ、明示されていることが、改めて勉強になる。一方で、BSCで一部議論されているような、戦略目標間を重要成功要因で因果関係として結びつける議論に、無理があることがわかる。

戦略と非財務的尺度の関係を考えれば、BSCのKPIについて、進捗度合い等を表す尺度が、そもそも戦略の成果を測定する尺度として不具合があることがわかる。これについては、BSCの提供側が検討せざるを得ない。

また財務的尺度と非財務的尺度との関係については、重要な示唆がある。つまり戦略及びその重要成功要因について管理するためには、非財務的な尺度を用いるわけだが、その成果を測定するためには、財務的な尺度を活用せざるを得ない、ということである。その前提に立てば、BSC上の戦略目標の評価にも、結果としての財務的尺度をどこかに含む必要があろうかと思う。BSCでもそれぞれの戦略の評価に関わる部分については、財務的な尺度が財務の視点以外にも含まれることがわかっているが、それがどのような形で含まれるべきかを検討する重要な示唆を含むと思われる。

P104
三つの点について管理会計情報の拡張が図られている点で、戦略的管理会計は「戦略的では無い」管理会計とは異なると考えている。
①短期的視点に基づく会計情報に加えて、長期的視点に基づく会計情報を用いる
②自社内の会計情報に加えて、企業外部の会計情報を用いる
③財務的尺度に加えて、非財務的尺度を用いる

P110
Fisherの理論は、戦略と非財務的尺度の関係を明示したという点で、他の論者に比べて優れている。Fisherは
戦略 → 重要成功要因 → 非財務的尺度による測定
という三社の関係を明確に示した。

P111
Fisherが示した非財務的尺度の体系には、以下の二つの問題点が存在する
①重要成功要因を測定するための非財務的尺度の決定方法が明確にされていないこと
②非財務的尺度と財務的尺度の関係が明瞭ではないこと

P112
従来は注目されていなかった物量尺度が、近年新しい測定尺度として次々と開発されている理由として、第1に、品質や納期に対する信頼性など、これまで管理会計であまり重要視されてこなかった要因が、重要成功要因として注目を集めていることを示すことができる。(略)
第2に、新しい測定尺度の出現は、間接費が増大してその管理の重要性が増したことと密接に関係している。(略)
第3に、新しい物量尺度はコスト面からだけでは無く、営業部員の顧客訪問回数のように、収益を獲得するために必要なレベニュー・ドライバをも包摂している

P115
非財務的尺度を業績評価に用いることには、以下の4つの長所がある。
第1に(略)、非財務的尺度による測定値は、(略)誰にでも容易に理解することが可能である数値、例えば不良品発生数や不良率などに総合化することが可能であり、あらゆる階層および部門に属する人々の理解を得ることが可能になる。
第2に、特定の部門が全社的最適化よりも部分最適化を優先して行動することを防止することができる。
第3に、意思決定時に非財務的尺度による測定値を用いていれば、それを業績評価時にも用いることにより、意思決定基準と業績評価基準を首尾一貫させることが可能になる
第4に、業績評価の結果を現場の部門に伝達することにより、注意喚起情報としての役割を期待することができる。

P116
財務的尺度が不要であるという主張は、以下の2つの理由から適切ではない。
第1に、適切に設計された財務管理システムにより、総合的品質管理プログラムを促進することが可能になる。第2に、非財務的な業績が改善されたとしても、それが財務的な成功を導くとは限らない。

P117
重要成功要因をコントロールするためには、非財務的尺度の利用が必要であるが、そのコントロールの成果を認識するためには、最終的には財務的尺度によって測定を行うことが望ましいことになる。

前のページへ戻る